異文化交流クイズ。サードシーズン「異文化間に芽生えた愛情とすれ違い」第2回。

明治16年スコットランドに造船留学中、本屋の店員の少女ジニー・イーディー(当時18歳)と知り合った川田龍吉。この二人の付き合いが如何なものだったか、からの出題です。

ジニーをエスコートして自宅まで送った龍吉は、彼女に先日付き合ってくれたことへの感謝の手紙を送ります。これが本格的な彼と彼女の一年半に及ぶ手紙のやりとりの始まりでした。

龍吉の死後発見された分だけでも89通。これは当然龍吉の手元に残されたジニーからの手紙だけであって、龍吉が彼女に送った手紙は数百通にも及んだ模様です。

お約束と云えばお約束ですが、夏目漱石の例を挙げるまでもなく、日本から英国への留学生達は不順な気候と孤独に悩まされ、心身共に病む者が多く、半年も保たずに帰国する者も多数いる中、龍吉の滞在期間は既に6年。不眠症と偏頭痛で悩まされ始めていました。

彼女はそんな龍吉にとって唯一人の相談相手になったわけです。

そして丁度ピッタリと云うべくか、ジニーは熱心なスコットランド自由教会に属する熱心なクリスチャンでした。

『木曜の夜、貴方は私があなたを導く天使だと手紙に書いて下さいましたね。でもリョウ、私はとうてい天使に値しません。だって、私はとても弱くて愚かで簡単に道を誤ってしまいそうなのですもの。でも私は正しく導かれるように、あなたのためになれるように祈ります。私たちの天のお父様はきっとこれを聞いて下さっているし、これからも聞いて下さるだろうと信じます』

ジニーは教会での活動と信仰の力を記すと同時に、龍吉の支えとしての責任を感じ、龍吉は感謝の気持ちを込めてジニーを守護天使とする願望を抱くようになっていきます。

彼らは週に二回、火曜と土曜の夜にデートをするようになりましたが、お互いの休日である日曜日には会うことが出来ませんでした。

理由は言わずもがな、日曜は安息日であり、教会に行かねばならない日だったからです。

ジニーは何度も教会に行くように勧めましたが、龍吉は遂に首を縦に振らず……その50年後、龍吉は彼の四男に次のような言葉を残したそうです。「耶蘇に入ったら、陛下に申し訳ない」と。

『惑わされないでね、リョウ。私を信じて下さい。キリスト教は神話ではなく真実なのです。楽しむべき人生であり、幸福なのです。どのような世界を与えるとか、奪うとか、そういうものではないのです』

そんな宗教観の違いはあっても、二人の間には結婚プランが徐々に形になっていきます。

ジニーがグラスゴー郊外の保養地へと龍吉を誘い、そこで短いながらも夏の休暇を共に過ごし、二人の気持ちはますます堅い物となります。

この直後のジニーの手紙には、キスマークさえ記されています。そして龍吉も「ジニーのことをより深く知る手助けとなるならば」と聖書を読むことには同意します。

さて、そんな風に結婚へと歩み出した二人ですが「その為にも」と龍吉は「あるもの」が欲しいとジニーに告げます。

それは購入するのは勿論、維持するにも大変な金額を要する物であり、ジニーも「二人に不可欠な物じゃない」と龍吉に諦めるように告げるのですが……さて、ここで今回のクエスチョン。

この購入するのにも、維持するのにも大変な金額を要する「あるもの」とは一体なんでしょう? 

ヒントとしてはこの18年後、龍吉は東京で手に入れることになります。その「あるもの」そのものではなく、その進化型であり、日本に上陸したばかりの「それ」を。