異文化交流クイズ。本日から始まるセカンドシーズンは所謂「ジャポニズム」をテーマに全10回にわたって出題していきます。

海外での日本趣味を意味する「ジャポニズム」という言葉は元々フランス語で、頻繁に用いられるようになったのは実は第二次大戦後でしかありません。

これ以前は「ジャポネズリー」という云い方が一般的で、これは実は十八世紀ロココ朝時代に流行した中国趣味の「シノワズリー」と同じように、異国趣味のエキゾチック的側面を強調するニュアンスが強いものでした(バルザックの小説だと、シノワズリー趣味で飾った貴族の屋敷が頻繁に登場します)。

これに対し「ジャポニズム」と云うときはそれに加え、そこに見られる造形原理、新しい素材や技法、その背後にある美学または美意識、さらには生活様式や世界観をも含む広い範囲にわたる日本への関心、及び日本からの影響が問題とされます。

簡潔に云うと、ジャポネズリーは明らかに日本に対する特別な好みを主要な動機とするのに対し、ジャポニズムは日本への関心が単に異国趣味という表面的なものに留まらず、西洋の芸術展開そのものと結びついているわけです。

日本の美術が本格的に紹介されるようになったのは19世紀半ばのことですが、時まさに西欧世界ではルネッサンス期以来、支配的だった造形原理――遠近法、肉付け法、明暗法など―――が大きく変わり始めた時代でした。

ルネッサンス期以降の絵画の基本原理は「二次元の平面である画面に三次元の現実世界の幻影を作り出すこと」であり、このようにして生み出された絵画世界は「日常世界とは別の独立した一つの世界」と考えられていたことから「絵としてのモティーフは画面の中だけで完結していなければならない」というのが、ほぼ四百年間、変わることなく続いていました。

そのような絵画伝統の中で育った西欧の画家たちにとって、日本美術の表現法は衝撃だったわけです。

一番有名な具体例を挙げると、北斎の「富岳三十六景」広重の「名所江戸百景」

左右のバランスを敢えて崩して主要なモティーフを画面の一方に偏らせたり、あるいは対象の一部分だけをクローズアップする思いがけない構図、流麗な輪郭線よる形態の把握、陰影のない鮮明多彩な色彩、余計な物を思い切って捨てる単純化がそこには描かれています。

勿論これは西欧の技法に対抗して生み出したものではありませんが、閉鎖的環境で独特に発達したからこそ、そのような独特な技法が生まれたわけです。

人物像にせよ、事物像にせよ、その全体図を示さず、画面の端でモチィーフを切って一部分だけを見せるという浮世絵などで好んで用いられたこの構図は「画面の世界はそれだけでは完結せず、更に画面の外にも拡がっていること」を暗示していて、これを『とある印象派の画家』は「影によって存在を、断片によって全体を暗示する」と表現し、積極的に自分の絵画に取り入れています。

さて、ここで今回のクエスチョン。日本でも抜群の人気を誇る、この印象派の画家とは誰でしょう?