第二夜は予告通り自称「毎日新聞」こと変態新聞記者Kにまつわる話であり、自分が病院に来たばかりの年に起った出来事でもありますので今後紹介予定の話の中でもっとも旧い話の一つになります。

これは臓器移植法が施行されてまだそれほど経っていない頃の話。

今から数年前、小児も対象に広げた改正臓器移植法が施行された当初はまだ一件一件の移植に際してニュースとなりましたが、今では地元新聞にすら臓器移植に関して記事が出ることはなくなりました。

つまり臓器移植がそれほど一般的なことになってきたということで、移植を待っている人たちにとっては良いことなのでしょう。

ですが臓器移植法が施行されたばかりの頃は報道が凄かった。

とりわけ施行後一号となった移植の時は、臓器提供者から臓器が摘出され、全国各地の病院(臓器移植コーディネーターが各臓器ごとに最適の移植者を選定するため提供先は全国各地に分散することになる)に搬送される様子が生中継されるほどでした。流石に移植件数が二桁目に入る頃にはそこまでの報道はなくなりましたが、それでも報道は依然として過熱気味でした。

この話の流れから察して頂けたかと思いますが、今回の「病院で本当にあった怖い話」は当院で行われた臓器提供の際のお話。

あれは大型の連休直前の某日夕方。

事務局長が職員を集めて「内密な話だけど」と切り出しました。

「本院で臓器提供が行われるかも知れない事態が発生している。連休中は元々予定のあった人間以外は全員自宅待機」

当時病院に入って一年目だった自分は「臓器提供委員会」というドストライクな委員会の事務をやっていたため(とはいえ、設立されたばかりのその委員会はその時点まで一度顔見せ的な会議を一度したきり)一瞬身構えました。

「実務的なことは間もなく到着予定の臓器移植コーディネーターがやってくれるから、主にマスコミ対策をお願いすることになります」

事務局長がそう続けたので一安心。

「マスコミ対策ねぇ、テレビとかも来るのかなあ?」

その時点まで本物のマスコミと直に接したことがなかった自分はそう呑気に構えていたのですが、その「ファーストコンタクト」が自分がマスコミを「マスゴミ」と断ずるようになった最初の契機となるのです。。。

再び呼び出されたのは二日後の早朝。

呼び出された職員の中では一番に病院に辿り着くと、この日もまた休日であったため一般職員も患者は誰もいない静寂の病院の中、偉い人たちは医師側も事務側もずっと病院に詰めていたということで既に事務局長室に勢ぞろい。

不謹慎ながらもこの後の展開に少しドキドキしながら現状を訊ねると、既に脳死判定は完了しており、臓器の提供予定先の病院も決定済みとのこと(この時点ではまだ臓器提供者の心臓は動いており臓器の摘出はされていない)。

「後はこのスケジュールに沿ってマスコミ報道するだけだから」ということで予定時間まで待機。

確か時間は10時だったと思いますが、その時間になった瞬間、市内に本局・支局のある新聞・テレビにFAXで一斉通知。

内容は当院でこれから脳死患者からの臓器提供が行われること、詳細は当院で11時から開催される会見で発表すること。

FAXを送信して三分も経たないうちにけたたましく鳴り響く電話の音。

ほぼ全てマスコミからの詳細を訊ねる電話でしたが、これに関しては事前に「余計なことは一切喋らない。すべて記者会見の場で話します」と統一されていたので問題なくクリア。

ここからこの日動員された病院職員は各所に散りました。

記者会見場に詰めるもの、引き続き電話対応するもの、やってくるマスコミの車を確保しておいた専用の駐車場に誘導するもの等。

そんな中、自分が割り振られたのは記者会見場への道案内訳。というのも、院内道案内のための矢印看板は用意したものの、三階にある会見場に行くためのエレベーターは本来職員しか使うことを想定していないため、非常に分かりにくいところにあるからです。

一斉FAXから三十分ほど経過して頃、最初の記者が現れました。〇〇新聞の女性記者でした。最後の矢印看板のところからエレベーターのところまで案内すると非常に丁寧な態度で「ありがとうございます」。

続いて二人目、三人目、四人目とごく普通に案内。最初の女性記者ほど丁寧ではありませんでしが、いずれの記者も一般的な社会人としての礼節をもって接してくれたのですが・・・遂に「ヤツ」がやって来たのです。

そう、ここでは仮名として「K斐」としておきましようか? ・・・ああ、後ろの部分を消し忘れた「甲〇」だ。

いや、更に間違った「K」だ。そう、ここでは「K」としておきましょう。

ところで変態新聞には唯一、他社の新聞に見習って欲しい点がありまして、それは「記者の署名記事」が非常に多いこと。いわゆる「文責」という奴ですね。変態新聞の場合、その署名があると独自記事だと判断してよいわけです。

ところで当院の事務方ではこのコロナ騒動が勃発して以来、「各社の医療関係記事に目を通しておくように」ということで各新聞社の医療関係記事を編集したペーパーが毎日回覧されているわけですが、個人的な意見で云わせて貰うと、一番悪質な記事を書いていたのはぶっちぎりで変態新聞です。

「日本の医療体制が危機です。今にも崩壊します、いや早く崩壊しろ」という怨念が滲み出るような紙面構成。

なにしろ記事の柱に「医療崩壊」というコーナーを設けるくらいまでに熱心に日本の医療崩壊を報じる具合に。

結局第一波が終わった頃にこの「医療崩壊」に関する記事の「まとめ」が載って「日本が医療崩壊しなかったのは医療機関が頑張ったのと運が良かっただけ(意訳)」という内容は想定通りだったわけですが、記事の署名に名を連ねたのは四人。

その筆頭、つまりこの記事群の責任者だと思しき人物は「漢字三文字」の名前の人でした。・・・もうコイツら、本当に隠す気ないな。そういう意味でも「怖い話」だけど。

なおコロナ記事が酷かったランキング、自分の選定した第二位は日経。いくら経済紙とはいえ、完全にこのコロナ渦でも本当に金儲けの匂いがする方向性の記事しか書きやしない。金儲けがしたいから政府のコロナ対応批判してるだけ、というのが丸わかり。

第三位は東京新聞。いつものことですが、実はコロナそのものはどうでもよくて、政府批判がしたいだけなのが丸わかり。

なお朝日は政府批判はいつものことですが、昔からの伝統で医療そのものの記事は意外とマトモなのです。

閑話休題。

話戻って記者会見場にやって来た変態新聞記者の「K」。

エレベーターに案内したものの、こちらの存在など全く無視したように無言で乗り込んでいきました。

しかしこれくらいなら別に何ということもありません。問題が発生したのは記者会見後の話。

11時からの記者会見が終わると、何人かの記者がエレベーターから降りてきて帰っていきました。夕刊のニュースにでもするのでしょう。

それで会見が終わったことが分かったわけですが、自分はこの後の対応の指示を受けていません。

事務局は2階なので記者会見した事務局長たちがまだその会見場にいるかもわかりません。

というわけで、自分もエレベーターに乗って3階の記者会見場の様子を見に行くことにしたのですが、会見場に入った瞬間、怒鳴りつけられまた。

「おい、お前、どうなっとるんじゃ!?」

紹介するまでもないと思いますがKです。

「はっ?」

「はっ? じゃねぇんだよ、はっ? じゃ!」

訳が分かりません。周囲を見渡すとまだ記者たちが何人か残っているものの、病院の人間は誰もいません。

「説明しろと言ってるんだ、説明!」

好き放題まくしたてるKに呆気にとられましたが、ようやく反論。

「いや、わたしは皆さんを案内していたので、何がどうなっているのか分かりかねるのですが」

「分からねぇじゃ困るんだよ。責任者連れてこい、責任者!」

新聞記者にも屑のような人間が存在しているんだ、と初めて理解したのはその瞬間でした。

・・・まさか世の中の新聞記者の大半が屑だとはその時には夢にも思いませんでしたが。

そういう意味でもこれは「怖い話」になりますが、話はこれで終わりません。

脳死患者から臓器が摘出され始めたのは昼過ぎ頃のことだったと思います。

マスコミ対応は病院を離れ、臓器コーディネーター側に移ったものの、我々職員は次々に増えていくマスコミ対策のため帰るわけにはいきません。

記者たちとしては「摘出された臓器が運搬される絵」が欲しいため玄関ロビーに集結。

テレビ局の中継車(2台)まで病院玄関脇に横付けされ、中継する気満々。

この日が休日であり、外来患者がいなかったのは本当に幸いでした。

間もなく全国各地の病院から臓器を運搬する人たちがやってきました。当たり前ですが、当院が運搬するわけではなく、移植手術を執刀する側の病院が臓器をとりにくるのです。

これは一刻を争うことであるため、マスコミを好き放題にさせておくわけにもいかず、病院職員も玄関ロビーに集結。

とはいえ、臓器の搬出はまだ少し先のことになるため我々もマスコミも手持無沙汰でいると、先程のKがうちの事務局長に纏わりついているのが見えました。近づいくまでもなく会話内容が聞こえてきます。

回りくどい言い方をしていましたが簡潔に表現するとこんなやりとり。

「臓器を提供した患者の個人情報を教えろ」

「臓器移植法で禁じられているから教えられない」

「そんなことは関係ない。我々には知る権利がある。とっとと教えろ」

「いや、何度言われてもそれは無理」

延々とこんなやり取りが三十分ほど続きました。

最初は猫なで声で個人情報を聞き出そうとしていたKは、最後は完全にヤ〇ザな口調に。

最後には「覚えておけよ」と漫画の悪役そのものの捨て台詞をはいて事務局長から離れていきました。

「・・・こいつ、真正の屑だな」

そう判断した自分ですが、このKが真正の屑っぷりを発揮しだしたのはこの後。

流石にこの臓器提供に関する記事はごく普通でしたが、こののち、数年にわたりKはひたすら当院を貶めるためだけの記事を書き続けます。

何故貶めるためだけ、と判断できるかと云うと、地元新聞をはじめとする当地で販売されている他の新聞社は一切問題視していないのに変態新聞だけが取り上げて記事化しているから。そして署名欄にはKの名前が。

一番すごかったのはいわゆる「テレビ欄の裏側」のページの大半を使っての「〇〇病院、業者と癒着か」という記事。

勿論嘘っぱちで、現に警察も動いていなければ、あまりに無理筋の指摘だったので名指しされた責任者について病院内で処罰されたりもしていないのですが、Kはこんな具合にうちの病院の悪口記事を退社するその日まで書き続けます。

というかうちの病院の悪口記事が載らなくなったので少し探ってみたら退職していた、というオチ。

なおその際に分かったのがこのK、元々は変態新聞の記者だったわけではなかったそうで。

官公庁関係で昔はよく見た社会問題系のミニ新聞の押し売りをしていたというのです。

ぶっちゃけて説明すると「評判の悪い記事を書かれたくなければうちの新聞を買え」って奴です。

勿論Kはマスコミの人間以前の屑ですが、更に悪質というか「怖い」のはこんな経歴の輩を雇い、前職の時の経験を生かして謂れのない悪口雑言を平然と乗せ続けた変態新聞の存在でしょう。

というのが本日第二夜の「病院で本当にあった怖い話」でした。

なおこの話は当然のことながら演出一切なしのまぎれもない事実なので、変態新聞記者の屑っぷりを拡散させる目的ならいくらでも拡散いただいて結構です。

というか、この件に関してはことあるごとに自分もネット各所に書いていたので、ひょっとしたら何処かで見たことのある記事になっているかも知れませんが。

次回第三夜は少し毛色の違う「怖い話」を。

自分はミステリー系の怖い話だと判断していますが、人によってはホラー系の怖い話になるかもしれません。